都合のわるい女







「かんぱーい!」


「乾杯! 乾杯」



俺は目の前に座っていた先輩と乾杯し、両隣りの後輩とグラスをぶつけ合い、ぐいっとビールをあおった。


くーっ、バイト後の酒は美味いぜ!



今晩はサークルの飲み会だ。


塾講師のバイトを終えてから直行したので、喉がからからに渇いていた。



右隣に座っている一年後輩の男と喋りはじめたところで、



「こらーっ、ニッシー!」



という怒鳴り声が聞こえてきた。



「あたしと乾杯する前に飲み出すとはなにごとだ!!
礼儀がなっとらん!!」



ーーータカハシだ。

向こうの席で立ち上がり、ビールの大ジョッキを俺のほうに向けている。


周りの仲間たちがにやにやしながら、俺とタカハシを交互に見てきた。




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