都合のわるい女
*
「かんぱーい!」
「乾杯! 乾杯」
俺は目の前に座っていた先輩と乾杯し、両隣りの後輩とグラスをぶつけ合い、ぐいっとビールをあおった。
くーっ、バイト後の酒は美味いぜ!
今晩はサークルの飲み会だ。
塾講師のバイトを終えてから直行したので、喉がからからに渇いていた。
右隣に座っている一年後輩の男と喋りはじめたところで、
「こらーっ、ニッシー!」
という怒鳴り声が聞こえてきた。
「あたしと乾杯する前に飲み出すとはなにごとだ!!
礼儀がなっとらん!!」
ーーータカハシだ。
向こうの席で立ち上がり、ビールの大ジョッキを俺のほうに向けている。
周りの仲間たちがにやにやしながら、俺とタカハシを交互に見てきた。