都合のわるい女
俺は見て見ぬ振りで奴らを無視し、ジョッキを持ったまたタカハシの席に移動した。



「はいはい。
ほら、タカハシ、乾杯」


「かんぱーい」


「じゃ、また後でな」



俺がもとの席に戻ろうとすると、タカハシが「もうー?」と顔をしかめたが、俺はなだめるように手を振った。


俺にも、人付き合いってものがあるのだ。



「先輩、すんません、席外しちゃって」



軽く頭を下げながら座ると、先輩は



「タカハシさん絡みならしゃあないだろ」



と笑った。



「あいかわらずタカハシさんに尽くしてんすか?」



後輩の一人が訊いてくるので、俺は



「あー、まあな」



ともごもご答えて、目の前のネギ間を頬張った。




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