都合のわるい女
それにしても、タカハシめ、怒った顔もかわいい。


紅潮した顔、きつく寄せられた眉、かたく引き結ばれた唇と、少しふくれた頬。


思わず凝視していると、タカハシがワインのボトルをつかんだので、



「ちょっと待て、それはさすがにやばい!俺、死んじゃうから!」



と言って必死で奪い取った。


そのときタカハシが、ふい、と俯き、



「………だから」



と小さく呟いた。


俺が「え?」と訊き返すと、タカハシは上目づかいで俺を見上げる。



そして、今度ははっきりと、こう言った。



「………キス、なんて、はじめてなんだから……。

寝てるときにするとか、最低………」




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