都合のわるい女
しかし、タカハシは俺の心とは裏腹に、なぜかものすごく不機嫌な顔で俺を睨んでいた。


先ほどまでの、頬を紅潮させた恥ずかしさや照れとは違い、千年の恨みでもこもったかのような表情。



「………タカハシ? どうした?」



顔色を窺うようにして訊ねると、タカハシは低く訊ね返してきた。



「………ニッシーは、………したこと、あるわけ?

その………キス………」



…………は?

予想外の問いに、俺は目を丸くする。


でも、タカハシの目は、真剣そのものだった。



「どうなのよ? 答えなさいよ」


「………そりゃ、まぁ………」



俺だって、彼女の一人や二人、いたことあるし。


だから、まあ、キスはもちろん、その先だって、それなりに、ごにょごにょ………。




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