都合のわるい女
俺の返答は、タカハシのお気に召さなかったらしい。


タカハシはさらに顔を険しくして、



「ニッシーの馬鹿っ!!」



と怒鳴り、俺の胸をどん、と殴った。


あまりの強さに一瞬、息が止まり、俺は胸を押さえて屈み込む。



そのすきに、タカハシはカバンをつかんで立ち上がり、俺の横を駆け抜けて玄関へ向かった。



「ちょ、タカハシ!?
どこ行くんだ!?」


「帰るっ!!」


「帰るって……もう2時前だぞ!?」


「知らん!!」



俺は慌てて駆け寄り、靴を履くタカハシの手首をつかんだ。


その瞬間、ぱっと振り払われる。



「さわるなー! けだものー!!」


「な……っ、けだものって、なんだよ!」



俺はもう一度タカハシの腕をつかむ。


今度は少し力をこめて、離されないように。


タカハシは観念したように力を抜いた。





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