都合のわるい女
俺のあまりの剣幕に目を白黒させつつ、その子は、


「あっちの建物からそろそろ出てくると思います」


と教えてくれた。


ありがと、助かった、と言い、俺は指差されたほうへと走り出す。



文学部は、やはり女子学生が多い。

なので、なんとなく近づきがたい感じがして、こんなところまで来たことはなかった。


でも、今日は、そんなことは言っていられない。


俺は玄関の真ん前に立ち、ぞろぞろと出てくる女子学生たちの顔をじろじろと見つめた。


不審そうな視線が俺に突き刺さる。


でも、気にしない。



しばらくして、俺の目は、一点に釘づけになった。


二階から玄関の前へとつながる階段を、ゆっくりと降りてくる人影。


顔はまだ見えないけど、俺にはすぐに分かった。




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