都合のわるい女
そのとき、ジーンズのポケットに入れていたスマホが、小さく震えた。


取り出して画面を見てみると、案の定、タカハシ。


ラインが入っていた。

すぐにタップして開く。

ずらずらずらっと並んでいる吹き出しに、俺は目を剥いた。



『ねーねー』

『はやく教えてよ』

『……返信おそい』

『なにしてんの?』

『あと5分以内に返信しろ!』

『まだ!?』

『バカ阿呆とんま!!』



あいかわらず、容赦のない………。


何をそんなに怒っているのか、と画面を上に送ってみると、35分前に



『ねー明日の飲み会何時から?』



というメッセージが来ていた。


サークルの飲み会のことだろう。



もちろん、35分前といえば、まさに講義中だったわけで、俺はスマホを見ていなかった。



断じて、既読無視ではない。


ただの未読である。



それなのに。


高飛車女・タカハシは、そういったこちらの事情など、いつでも完全無視なのである。





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