恋する淑女は、会議室で夢を見る
―― 怖かった…
エレベーターの中で、突然狼に変身したマー先輩の怒った目。
思い出した怖さごと飲み干すように、ワインをゴクッと飲んだ真優は
ため息をついた。
ハァ…
”さようなら”と言って顔をあげた時、
少し驚いたように真優を見たマー先輩の喉がゴクリと動いたのが見えた…。
あのまま駐車場に行っていたら、まっすぐ家まで送ってくれたのだろうか?
強引なキスを思い出し、恐怖を忘れるようにまたワインを飲んだ。
優しいマー先輩を豹変させた理由はなんだろう?
―― 私は何をしちゃったんだろう?
いったい何を…
…
―― ん…
「大丈夫か?」
「…皆さんは?」
「さっき帰ったよ」
テーブルの上は、真優のデザートプレートの他、チーズの盛り合わせなどワインのあてになるものだけが残されている。
グラスは真優のものと桐谷専務の2つだけ。
慌てて腕時計を見ると、まだ9時半。
時間はそれほど過ぎていなかった。
「どうする?帰るか?」
「…いえ
飲みます!」