恋する淑女は、会議室で夢を見る
・・・
「 そ れで ね?」
パシッとテーブルを叩いて
「聞いて くらさいよ せんむぅー」
瞼を重たそうに開いた真優が
クイッと首を回して桐谷専務を睨んだ。
ふと目を覚まし、飲みますと宣言した真優は
いきなりグラスの中のワインを一気に飲んで
それから先は、専務にとめられて水しか飲んでいないが、後の祭り。
既にどうにもならない酔っ払いである。
「・・・」
チラッと真優を見下ろした桐谷専務は
ため息まじりに小さくうんうんと頷いた。
「あ あたしはねっ
マーしぇんぱいが、仕事はどうだ?って きくから
仕事のはなしをして
で、専務はどういう ひとだ ってきくから
専務の話を しただけ でぇ
なの に …」
うぇーん
しまいに真優は泣き出した。
「あぁー
わかったわかった 泣くな」
遥人が洸たちと話をしている間に真優が開けたワインは、ボトルの半分だったが
スマホを見たり、店にあったファッション雑誌を読んだりして大人しくしている様子から
まさかそれほど酔っていたとは、気づかなかった。
迂闊だったと後悔しながら
ハァ…
溜め息をついたがもう遅い。
「ほら、落ち着いて」
水の入ったグラスを勧められてクイッと水を飲んだ真優は
「…あんなに 怒らなくたっていいのに」
とシュンとして涙を拭う。
「それで、あいつに俺を褒めたのか?
貶したのか?」
「ぇ?
どっちかって いうと ほめました …けど?」
「だったら
あの小生意気なCEOが怒るのも当然だ」
「?」
「もしも俺の恋人が
俺に向かって他の男を一言でも褒めるようなことがあったら、
怒るどころの話じゃない そりゃもう激怒だな」
「へ?」
「…
さぁ 送るから帰ろう」