恋する淑女は、会議室で夢を見る
理由はまた例の”うっとおしい”である。
その”うっとおしい”のお陰でなかなか秘書が決められなかった。
少なくとも今いる秘書課の女性で、他の役員の専属になっていない者の中には”うっとおしくない”人材はいない。
ハァ
と大きくため息をついた瀬波は、問題を振り切るように書類に手を伸ばした。
――大丈夫
社長が日本いる間、専務である遥人は社長と行動を共にすることになるのでこの専務室にいる機会もほとんどないだろう。
秘書とはいえ、青木真優との接点は極端に減るのだから心配はない。
いずれにしろ今はそれどころではない。
これからのひと月の間になんとしてでも契約までもっていかなければならない重要案件が最低でも2つある。
青木真優に代わる秘書の件は、頭の一番端に追いやった。
・・・
ランチタイム。
ポツンとひとり、自分の席でお弁当を食べ終わった真優は、
フゥー っとため息をついた。
9時からの会議で、秘書課長から社長が急に来ることになった経緯が簡単に説明された。
数日後に来日予定である某国の有力者と、急遽約束がとれたということや、重要なプロジェクトが大詰めを迎えていることなどだ。
その他の話は担当役員のスケジュールの変更があるだろうから個別に対応するように。大まかに言うとそういう話だった。
その後、瀬波から指示を受けた真優は、
桐谷専務の予定の変更をするために社内を走ったり社外に電話を入れたり、バタバタと手続きに追われ
あっと言う間に時間は過ぎていった。