恋する淑女は、会議室で夢を見る

『うらやましいよー 真優
 あんな素敵な御曹司の秘書なんだもん』

酔ってはいても、微かに残る理性が専務の悪口を言うことを止めていたが
その分不満は溜まる一方だ。


「… よっし
 文句のひとつも言ってやろう」

他のみんなから少し離れて、バッグから専務専用電話を取り出した真優は、ピッと発信ボタンを押した。


RRR RRR 


「はい」

「あ、センムです か?~ あたし ですー
 あなたの不良娘のー ヒショさんの真優でぇーす」

「…」

「言っときますけどね、
 あたしは ね、箱入りムスメなんですっ
 たいだいね
 セクハラヤローが何言っちゃってんの?」

「… 今 どこにいるんだ」

「マーせんぱいはね、まじめな人なんですっ!
 だから あたしも まじめに 真剣にー 悩んでるんじゃ」
「店の名前を言え」

「セクハラ変態と一緒にしないでくださいっ!」

「どこだ!?」

「うるさいなー
 これから 【Fleur mignon】で2次会なんですっ
 ほっといてください」

「ピッ」

「だからね!
 …
 あれ?
 ったく 切ったなヘンタイめ」





「真優― 行くよ~」

「はーーい」
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