恋する淑女は、会議室で夢を見る



「ねー真優 あんた本当に大丈夫?」

「らいじょぶ らいじょぶ」


少し歩いたせいで酔いが回ったのか、
ホテルのバーに到着した時には、真優の様子が相当怪しくなってきた。

「ほら、水飲んで」

渡された水を飲みほし、真優がトイレに立ったその時である。


「… ぁ」

!!!

店に入ってきたその姿を見た途端、ガタッと音を立てて
一斉に全員が立ち上がった。


不機嫌極まりない顔をして現れたのは、
スーツ姿の桐谷専務だ。



「来い」

「… な なんですか!
  はなして くださいよっ」


直立不動で緊張し、成り行きを見守る面々を振り返った専務は、

「彼女の荷物は?」
と、聞いて
慌てて総務課の女子が渡した真優の荷物を持った。


立ち尽くす男性社員には
「女性をこんなに酔わせるのはどうかと思う」
と、鋭い視線で睨みながら注意をして

真優の腕をひき、店を出ていった。


「「「すいませんでしたっ」」」



・・・



「もぉー なんなんですか?
 離して くださいよぉー」

「何をやってるんだ そんなに酔って」

掴まれた手を思い切り振りほどいて真優が桐谷専務を睨んだ時、
上がって来たエレベーターがチンと音をたてて止まった。


そして
エレベーターから降りてきたのは…


「あ マー先輩」

「真優」


白木匡は、仕事帰りに秘書と友人である役員を連れて
食事がてらバーに入ろうとしていたところだった。


どうみても酔っている真優をそのまま見逃すはずもなく、
「先に入っていてくれ」
連れの2人には店に入るよう促すと
白木匡は、桐谷遥人と真優の前に立ちはだかった。
< 173 / 210 >

この作品をシェア

pagetop