恋する淑女は、会議室で夢を見る
「大丈夫か?真優」
「アハハ らいじょーぶですよぉー」
「桐谷さん、これはどういうことでしょう」
「ご覧の通り、酔っている秘書を家に送るところですが 何か?」
「それでしたら、私が彼女を送ります
真優 行こう」
「結構です」
真優に向かって差し出した匡の手を遮るように
桐谷遥人は真優の手を引き自分の後ろにグイッと下がらせた。
「あなたは一体なんなんですか!」
「彼女の上司ですが」
「酔っている女子社員の手を強引に引き…
あきらかなセクハラ行為ですね」
「ほぉー」
揉めている2人の後ろで、真優はガサゴソとバックを漁り
スマートフォンを取り出した。
ピッ
RRR RRR
「もしもーし」
『お嬢さま?終わりましたか?』
「ん、迎えにきてね~
今、ホテルエンジュの【Fleur mignon】にいるのー」
『はーい
もうそろそろかと思いまして、近くまで来ているんですよ
あと5分で伺いますから』
「はーい よろぴく」
ピッ
前回、酔って桐谷専務に送ってもらった後、
真優はユキと母にこっぴどく叱られたのだ。
今日も意識がしっかりしているうちに必ず迎えを呼ぶ約束をしていた。
――これで大丈夫
満足そうにニンマリと真優は笑った。
「あのー あたしは帰りますね
… ん?」
振り返ると、
何やら雲行きが怪しい。
「訴えたきゃ、訴えたらどうだ?
あの日、あんたが彼女にエレベータ―の中で何をしたのか
監視カメラに映ってるんじゃないのかな」
「…」
双方、火花を散らしながら睨みあっている。