恋する淑女は、会議室で夢を見る
チョコレートは恋の味

酔って帰った次の日の空は、
暗い雲が漂う真優の心を叱咤するように痛いほど晴れ渡っていた。

寝覚めはいつもよりも遅かったが、頭痛に悩まされることもなく
すっきりとした気分で起きた真優は、
この前酔った時とは違って前の晩に起きたことは覚えていた。

起きて、シャワーを浴び
一息ついてからスマートフォンを見ると、一緒に飲んだ同期の数人から心配するメッセージが入っていた。
家の者に迎えにきてもらったし、桐谷専務も怒ってないから心配ないと返信し、
ユキには、白木匡とは偶然あの場で会ったことを説明したが、

『あらまぁそうでしたか
 桐谷さまはどうして?』


問題があるとすればそこだ。


”言っときますけどね、
 あたしは ね、箱入りムスメなんですっ
 たいだいね
 セクハラヤローが何言っちゃってんの?”

言ったことも大体覚えているが、さすがに詳しいことは言えず…

『うーん…ちょっとね
 一次会の後、電話して
 もしかすると心配して駆けつけてくれたのかも…』


考えれば考えるほど、穴があったら入りたいほど恥ずかしくなり
今度こそ桐谷専務にはちゃんとあやまっておかなくちゃ、と
溜め息しかでない。

そして、ヒシッと抱きついたことを思い出して赤くなった真優に、

『そういえば桐谷さまが
 ”無理を通しても、所詮は徒花だ”
 そんなことを仰ってましたね』

ユキがそんなことを言った。


それについてはよく覚えていなかった。


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