恋する淑女は、会議室で夢を見る
その日の夜、
寝つきの良さは自慢のはずなのに、真優はなかなか眠れなかった。
――桐谷専務が、好き?
振り払っても振り払っても、湧き上がるそんな想いが気持ちを高ぶらせた。
自分は氷室先輩に恋をして、胸をときめかせていたのではなかったのか?
そう思いながら氷室先輩を頭に浮かべようとしたが、なかなか上手くいかない。
そういえば桐谷専務が社長と行動を共にするようになってから、氷室先輩は専務室に来ることもなく、しばらく顔も見ていなかった。
そして、そのことを寂しいと思っていなかったことに
今更のように気づいた。
マー先輩のこともあって、いつの間にか氷室先輩への想いは薄れてしまったということなのだろうか…。
――昼間のショック…
そのショックは、氷室先輩がパーティで女優とキスをしているところ見て傷ついたあの時と
何かが違う気がした。
パーティで氷室先輩を見かけたあの時は、
一方的に空回りしている自分がバカみたいに思えて悲しかった…。
でも…
今日の気持ちは少し違う…
何かがすごくイヤだった。
腹立たしいように…
心に残る、このわだかまりは何なんだろう…
真優は原因を探るように、一つひとつ思い浮かべてみた。
車を運転する専務
知らない服装でプライベートで寛ぐ専務
そして、気がついた。
―― ぁ
この胸の痛み…
専務が他の女の子に、あんな風に楽しそうに笑いかけるのがイヤなんだ。