恋する淑女は、会議室で夢を見る
「…それは大変でしたね お嬢さま」
「うん、でもまぁ断りに行ったわけだからね
ちょうど良かったというか」
真優は笑ったが、ユキの胸の内には沸々と怒りが込み上げていた。
他に女がいたのに、よくも抜けぬけと卒業してからずっと真優のことだけを考えていたなんてことを言えたものだと、憎しみすら覚える。
純粋培養のお嬢さまに対して、そんな調子のいいウソをつくことに罪悪感はないのか?
――許せない
「とんでもない男でしたね
お嬢さまさっさとアドレス消しましょう」
さあさあ と真優を急かして
ユキはひったくるようにして白木匡の着信拒否の設定とアドレスの削除をした。
「とにかく よかったです
旦那さまや奥さまがお会いになる前で
本当によかったです
明日の夜には大事なお客様もいらっしゃることですしね」
「お客さま?」
「はい、
どなたかは聞いてませんが、お嬢さまも同席して
一家でお出迎えとおっしゃってましたよ」
「ふーん」
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