恋する淑女は、会議室で夢を見る
―― さて 仕事に戻ろうか

ハァ…

と、ため息をついて 空のカップをゴミ箱に入れて振り返ると


  !!!


いつからいたのだろう 
そこには桐谷遥人がいた。



桐谷遥人は、自販機に一万円札を入れようとしている。


「あの…
 その自販機、一万円札は使えません」

え? という風に桐谷遥人が真優を振り返った。

「そうなの?」

真優は小銭入れから300円を取り出して
カチャカチャと自動販売機に入れた。


「・・・」

「おごってあげる訳じゃありませんよ
 後で返してくださいね」

なんとなく反抗的な気分になって、
ついそんなことを言ってしまったが

桐谷遥人は
「ありがとう」
落ち着いた声で、礼を言う。


――子供の対応に、大人の返し

恥ずかしさに俯いて、キュっと唇を噛んだ真優は
一刻も早く立ち去ろうと大きく足を踏み出した。

その時である。




しまったっ! 

今日はタイトスカート! 足を大きく開けないぃー
と気づいた時には遅かった。


 ひゃあ!


バランスを崩して 
後ろに転びそうになったところで


ガシッ と 桐谷遥人に抱きかかえられた。

!!!!!



「・・・」


 …ゴクリ



目と鼻の先に 美しい桐谷遥人の顔がある。



「大丈夫?」

「―― はい 
  …  大丈夫  です」

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