恋する淑女は、会議室で夢を見る
 
 
「あ、
 瀬波、営業の青木さんに300円借りたから 返しておいて」

「はい わかりました
 営業の青木真優でよろしいですよね?」 

「うん、そう」

「ちなみに彼女は、青木コーポレーションのご令嬢です」


「青木の令嬢・・・?」


「ええ、名前に聞き覚えがありましたので
 もしやと思い調べましたが、間違いありません」


「でも、どうしてうちに?」

「働きたかったのでしょう
 純粋なお気持ちで…」



「…ふーん」


「それはそうと…」
瀬波は、そう言いながら 遥人にティッシュを差し出した。

「…?」

不思議そうに首をかしげる遥人に
珈琲のカップの蓋を 視線で指した。


「 あ…」

蓋の飲み口に 薄っすらと口紅がついている。



「…からかったりしては いけませんよ
 純情なお嬢様なのですから」


瀬波に軽くに睨まれながら 
唇とカップの蓋を ティッシュでサッと拭った遥人は

「純粋ってゆうか
 子供だよ」

そう言って、肩を竦めて
いたずらっぽく笑ってみせた。


クスッ
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