恋する淑女は、会議室で夢を見る
「―― 今どき珍しいくらいの
子供だ」
*...*...*...*...*
真優の唇と桐谷遥人の唇が重なってしまった後、
真優はショックで固まっていたが
桐谷遥人のほうは そんなことは気にする様子もなく
落ち着いて、ゆっくりと真優の体を抱き起した。
「大丈夫?
足をくじいたりしなかった?」
「は・・ぃ」
本当にどこもなんともないかどうかを確認するように ぐるりと見渡した桐谷遥人は、
真優の無事を見届けると
ホッとしたように溜息をついて、ササッとスーツを手で払い
自分の身なりを整えた。
それから
ガチャ
既に出来上がっていたカップ珈琲を 自動販売機から取り出して、
その香りを確認すると ひとくち口にした――。
珈琲は、それほど冷めていない。
そのことに満足して、遥人はそのまま上の階に戻ろうとしたが
なんとはなしに気になって
振り返って真優を見た。
見たところ、体のほうはなんともないようではあるのに
どうも様子がおかしい。
そう思って よく見ると、
背中を向けている青木真優は俯いていて
肩が、悲しげに震えていた。
そして、
真優は小さな声で
「私のファーストキスなんて…
どうせ こんなものなんだ…」
そう呟きながら
泣いていたのだった。