恋する淑女は、会議室で夢を見る
 

見ればバッグの汚れは、ほんの少し。

その汚れも、拭けば落ちるに違いない。
何しろお嬢さまのバッグは布製品ではなく、どうみても皮のバッグなのだから。


要するにこれは、
 弱い者イジメだ。

そう確信し、お嬢様の傲慢な態度にむかついた真優は
大声で怒鳴ってやった。


『へえーーーー
 お金持ちのお嬢さまというのは、こんなに謝っても許してくれないんですか

 ほんの1センチ バッグが汚れただけで
 拭けば落ちる汚れでも?

 へえーーーーー
 買って返したほうがよろしいんでしょうかぁ~?
 どちらのお嬢さまでいらっしゃるのですか?』


道行く人の注意をひくように騒ぐ真優を、悔しそうに睨み
お嬢さまはその場から立ち去った。




今目の前に立つ花嫁は…


―― そう…あの時の傲慢なお嬢様だ


美人ではあるけれども、
人を見下すその特徴ある目配せは、その時とまったく変わっていなかった。
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