恋する淑女は、会議室で夢を見る
ゲホ
ゲホ ゲホッ
「大丈夫か」
「ゲホッ
だ…大丈夫です …ゲホッ」
「いいから しゃべるな
しょーがねぇなぁ 珈琲が気管に入ったか?」
クスクスと笑う先輩の手が伸びて
真優の背中をさすった。
―― 先輩
そんなに気易く触ったら セクハラですってば
「だ…だいじょうぶ
で す」
背中をさする仁の手が妙に気になって
涙を流しながら
真優は尚更せき込んだ。
「まあ いいじゃないか
真優はそこが魅力なんだしなぁ」
氷室先輩はそう言ってクスクス笑いながら
ようやく咳が落ち着いた真優に
自分の分のデザートをくれた。
「この店はドルチェが人気なんだ」
氷室先輩は甘いものはあまり食べない。
「わーい」
もしかして、甘い物好きの私のために
この店を選んでくれたのかな…
そう思いながら口にした
フルーツたっぷりのケーキは、
甘いけど 少し酸っぱくて
それはちょうど真優の胸で疼く
’恋’ のようだった…。