恋する淑女は、会議室で夢を見る
その麗しき王子が
全てを見透かすような冷たい視線で、真優に言ったのだ。
『身だしなみは気をつけるように』 と。
悲しいやら悔しいやらで、
真優は自分の席に戻ると、氷室先輩に愚痴を言った。
『聞いてくださいよ先輩
ひどいんですよ
桐谷さんったら”身だしなみは気をつけるように”だって
失礼ですよねっ』
するとどうだろう。
氷室先輩はチラリと真優を見て
『まあ 当然だろうな、社会人なんだから
特にお前は、営業で外回りもあるんだし』
と、言ったのである。
『・・・』
あらためて社内を見回せば
女子達は、社員に限らず派遣社員もアルバイトも皆、
髪も化粧も確かにキチンとしていた。
真優のように、汗で化粧が落ちているということもなければ、
寝癖がある子はどこにもいない。
去年制服が廃止されてからは、服装もカラフルになっていた。
そして、
真優はようやく気が付いた。
―――― 失礼なのは…
私?