笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
その人は、言葉通りに10分で迎えに来た。
本当に、陽泉のことが心配なんだろう。

「ヒナ、大丈夫か?」
と、その人が開けたのは隣の個室。
そう…
陽泉の恋敵がいる部屋。

もちろん、隣からは驚きの声が…

「…えっ?…なんで美咲たちが…」
「あれっ、祐介くん。どうしたの?」
「えっ?吉田さん?美咲さんのお迎えですか?」
「…いやいや。今、ヒナって言いませんでしたか?」
「えっ…?どうなっているの?」
「吉田さん?美咲さんを迎えにきたんじゃないんですか?」
「"ヒナ?"って、どういうことですか?」

混乱している隣の部屋。
私はそっと、その仕切りのふすまを開けて声をかけた。
「…吉田さんですか?
電話をした青山です。
私、慌てて部屋の場所を間違って教えてしまったみたいで…ホントすみません」
「あっ…、いえ…。
えっと、ヒナは?」

そこで吉田さんは、壁に背中をつけてうずくまっている陽泉に気付き、そばまでいくと
「…ヒナ、どうした?
大丈夫か?」
と、そっと抱きしめた。

「んっ…、祐介?
ごめん。…あんまり大丈夫じゃないかも…」
そう言って、吉田さんにもたれかかる陽泉。

吉田さんは陽泉を支えながら私を見る。
隣の5人と、小野くん·平山くんは、ポカンとした表情(カオ)だ。


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