笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
気付いた気持ち~祐介Side~
その電話は、思いがけず鳴り出した。
時間は午後8時半を過ぎたところ。
『着信 ヒナ』の表示に目を疑う。
ヒナは今日、会社の同期と飲み会のはずだ。
帰りは、「郁海に迎えに来てもらう」と言っていた。
「そっか、それがいいよな」とは答えたけど、"ヒナにとって俺ってどんな存在?"と、問い質してみたい。
…俺としては、もっと甘えて欲しいのだけど。
もっとワガママも言って欲しいのだけど…
そんなことを考え、
『もしかして、ヒナが"迎えに来て"って言うのかも…?』と思い、
「もしもし。ヒナ、どうした?」
意気込んで電話に出たら、少しの間のあと
「…もしもし。
私、陽泉と同期の青山紗英と申しますが、吉田祐介さんのケータイでしょうか?」
落ち着いた声が聞こえてきた。
「…はい、吉田ですが。ヒナ…陽泉がどうかしましたか?」
「あっ…、はい。
陽泉、体調が悪くなったみたいで、ちょっとうずくまったまま動かないんです。
なので、迎えに来ていただけると助かるのですが…」
「分かりました!
場所はどこですか?」
青山さんは丁寧にお店の名前と場所、そして個室のナンバーまで教えてくれた。
「ありがとうございます。10分で行けると思います」
言いながら俺は車のキーを手にした。
何があったのだろう。
陽泉が心配だ。