笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「ちょっと休憩」
湖畔のベンチに腰掛ける彼。私も、その隣に座った。

「なぁ陽泉」
湖を見つめたまま、私を呼んだ佐々木くん。
「なぁに?」
私も同様に、湖を見たまま返事をする。
すると、
「俺、陽泉のことが好きだ!」
信じられない言葉に、思わず隣の彼を見た。

彼は、まっすぐ湖を見たまま続ける。
「俺が6年生のとき、陽泉が女子部に入ってきて、素直にコーチの言うことを聞いて、すごく上達していて…。そんな陽泉を見て、当時、忘れかけていたバスケに対する情熱を思い出した」
「……………」
「中学·高校と進学しても、時々、陽泉のバスケを見に行った。陽泉のプレーは俺自身の勉強にもなったから」
「……………」
「…あの日、田村さんや愛美ちゃんを通じて会えるなんて思わなくて…、ましてや同じ会社になるなんて、思いもしなかった。
…同期として接するうちに、陽泉の素直さや一途さに惹かれていた。…いや、6年生のときからずっと、陽泉への想いは消えていなかったんだ」
「……………」
「陽泉の笑顔が好きだ!だから、陽泉が笑顔でいられるならと、自分の想いもしまい込んだ。
…でも後悔してる。初めて陽泉を抱いた日に、ちゃんと言えば良かったって。
あんな"契約"なんかしないで、ちゃんと陽泉の隣にいられるようにすれば良かったって」



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