笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
しかし、彩菜ちゃんの反応は、私が想像したものとは違った。

「…うまく言えませんけで、陽泉さんと祐介さんの関係ってオトナです。
一途に会えない人を想い続ける陽泉さんと、そんな陽泉さんの気持ちを知っていながらも、陽泉さんの側にいることを選んだ祐介さん。
なんか、私には想像すら出来ない世界です」

そんな彩菜ちゃんの話の途中で、寝室から"ふぇ~ん"と、か細い泣き声が聞こえてきた。
「あらあら、先に寝てたおチビちゃんが起きちゃったわね。お腹がすいたのかしら」
すぐさまママの顔になる愛美先輩。
私からすると、そんな愛美先輩が羨ましい。
愛する人と結婚し、その人の子供を産み、平凡だけど幸せな家庭を築いている。
彩菜ちゃんもまた、運命の相手と信じる人と共に家庭を築いていこうとしている。
私からすれば、運命の相手と出会い結ばれた、愛美先輩と彩菜ちゃんが尊敬に値する。
私も、2人みたいになれるのだろうか?
まだ、この時の私は知らない。これから約4ヶ月後の夏に、佐々木くんとの再会を果たすことを―





☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

拓海の、中学最後のバスケの大会は、6月中旬の中体連の地区予選から始まる。そこで上位の成績を残せば、7月下旬の県大会へ。そして、その県大会で優勝すれば8月下旬の全国大会へと続く。
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