笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
そんななので、祐介が私の部屋に入るのを、見つかるわけにはいかない。
もちろん、イケナイことなどするつもりはないけど。

「お疲れ」
「うん、お疲れさま。
お茶でも飲む?」
「いや、いい」
「そう…」
「うん」
「……………」
「……………」
「…やっぱり強かったな、富士中…」
「…うん、そうだね。
ベスメン2人がベンチで、あの試合展開されたらどうしようもないね」
「そうだな。
…たぶん明日、富士中にうちの試合も見られると思いますが、どうしますか?陽泉コーチ」
「…うん。麻生先生とも相談するけど、初戦はフルで戦いたいかな。
2回戦以降は、余裕があるときは拓海やスタメンを後半、休ませたいけど」
「…なるほどね」
「……………」
「……………」

わざわざ祐介がこの部屋を訪ねてきたのは、こんな話しをしたいからじゃない。それはお互いに分かっているのだけど…、口に出すのが怖い。

「……………」
「……………」

だけど、話しをしないわけにはいかない。

「…ヒナ。
俺と別れて、彼のところへ行く?」
「えっ…?」

切り出したのは祐介だ。

「彼の話って、そう言うことじゃなかったの?
"まだヒナのことが好き"って、告白されたんじゃないの?」
「……………」

祐介の言葉が、私を追い詰める。


< 196 / 250 >

この作品をシェア

pagetop