笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~

  陽泉のために~祐介Side~




『陽泉ちゃんなんか、ちょっとかわいい、バスケットが上手いだけの女の子じゃない!』

片桐梢からトラウマの言葉を投げ付けられたヒナは、その場で耳を塞ぎ、しゃがみ込んだ。
そんなヒナを見た田村さんは、佐々木さんに
「悪い、稜。
陽泉を宿まで送ってくれないか?フロント前で待つように、拓海に連絡を入れておくから」
そう言った。
その言葉を聞いた郁海は、ケータイを取り出し、拓海に電話を入れる。
この辺の連携は、さすがだと思う。

郁海の電話が終わると、田村さんは再度、佐々木さんに向かい、
「こっちはちゃんと話しをつけておく。稜の悪いようにはしない。
だから、陽泉を頼む」
そう言って頭を下げる。

佐々木さんは、田村さんから俺へと視線を移す。
俺も田村さんと同じように頭を下げて、
「…佐々木さん。
ヒナのこと、よろしくお願いします」と伝えた。

「分かりました」
佐々木さんはそう言いながら、俺たちにお辞儀をすると、ヒナを支えながら歩き出した。
そんなヒナと佐々木さんの後ろ姿を見送りながら、"今度から、ああしてヒナを支えてやるのは、俺じゃなくて佐々木さんになるんだ"と思った。

もちろん、そんな日がくるのは分かっていた。
ただ、こんなに早くくるなんて思わなかったので、まだ心の準備が出来ていなかった。



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