笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
田村さん·愛美さん·紗枝ちゃん·郁海は、ヒナと佐々木さんの想いを叶えるために、2人の気持ちを必死に守った。
…じゃあ、俺に出来ることは?
『ヒナを自由にしてあげる』それだけだ。





☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

翌日。
うちと富士中の試合の合間に、梢がヒナを呼びに来た。
ちょうど麻生先生がいなくて、俺はヒナを「行って来ていいよ」と送り出した。

10分足らずで戻って来たヒナは困惑顔だ。
「…ヒナ、どうした?」
と尋ねると、
「うん…。
梢ちゃん、佐々木くんと別れたんだって」
と、教えてくれた。

(彼女は彼女なりに考えて、佐々木さんとの別れを選んだんだ。)
そう思った。
そして、俺も早くヒナに自由を与えなくちゃ!
善は急げだ!
麻生先生が戻ってくると、許可をもらってヒナと一緒に会場を出た。
行き先は、会場からちょっと離れた公園の木陰。
まだ暑い8月下旬の昼下がり。周りに人影はない。
俺は自販機でペットボトルの紅茶を2本買って、1本をヒナに渡すと、話しを切り出した。

「なぁヒナ。
こんな時にする話じゃないのは分かっているけど、どうしても今、この大会が終わる前にヒナに伝えなけばならないことなんだ。
聞いてくれるか?」
「……うん」
戸惑いながらも頷いたヒナに、俺は静かに言った。





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