笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「ごめんヒナ。
俺と別れてほしい!」
「えっ…?」
俺の言葉を聞いたヒナの大きな瞳が揺らいだ。動揺しているのが分かる。
俺は言葉を続ける。
「別に、ヒナをキライになったわけじゃない。ただ、ヒナよりも気になる女性(ヒト)が出来た。
だから、このままヒナと付き合い続けることは出来ない。
本当にごめん」
俺はそう言って、ヒナに頭を下げた。
「…うん、分かったよ。
その女性と、幸せになれるといいね」
ヒナはそう言って微笑んだ。無理していると分かる笑顔。早く彼の隣で、本当のヒナの笑顔を見せてほしい。
「…話はそれだけ?
じゃあ私、先に戻るね」
そう言って歩き出したヒナ。
俺はその背中に声をかける。
「…ヒナ。恋人として、ヒナと付き合うことは出来ないけど、友達としてならそばにいるから、何かあったら、いつでも相談してくれよ」
俺の言葉を聞いたヒナが小さく頷くのが見えた。
その途端、俺の頬を涙が伝うのが分かった。
俺はそばにあったベンチに腰かけると、涙がこぼれないように上を向いて唇を噛んだ。
"気になる女性がいる"
ヒナにはそう言ったけど、実際、そんな女性がいたとしても、ヒナと別れてまでその女性を選ぶなんてしない。
ヒナも、それに気づいている。
その上で、俺からの別れ話に頷いてくれた。