笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
今年の春から、悟さんと一緒に、昨年の全国大会で優勝した、静岡県の富士中学校のバスケ部のコーチをすることになった。
やはり昨年の優勝チームだけあって、それまで教えていた子たちと、レベルが違った。ただ、何を教えても簡単に出来てしまうから、前の子たちみたいな一生懸命さは見えない。バスケットと言うスポーツをナメているようにも思えて、正直この子たちは、あまり好きになれなかった。

そして、地区予選が始まった。
初戦の1Q。ベストのメンバーで臨んだ。53対2。
「もうこれ以上、俺たちが出る意味がないでしょう?」
キャプテンがそう言うと、スタメンはベンチに座り、2番手の5人が選手登録に行った。
2Qが終わり80対7。
どう転んでも負けないと思う。
後半は2番手のメンバーもベンチに下がり、残ってる3番手のメンバーで戦った。
最終結果は111対23。
圧勝だった。

試合後、キャプテンが悟さんと俺に宣言した。
「地区予選、そして県大会レベルに、俺たちベスメンがわざわざ出ることはないでしょう!
いや、今回は周りに実力の差を見せつけるために、1Qだけ出場しましたが…。
次からも、一応ベンチには入りますが、余程の展開にならない限り、俺たちは試合に出ません。無駄な体力をつかいたくありませんので」


< 219 / 250 >

この作品をシェア

pagetop