笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「陽泉。
車まで、ちょっと歩くけど大丈夫か?」
「うん」
そう言葉を交わして佐々木くんについて会議室を出る。

すると…

「小野さん。小野陽泉さん!」
と声を掛けられた。
振り向くと、確か本社に配属された男性で、

「これから予定ありますか?
良かったら、一緒に飲みに行きませんか?」
と誘われた。

「…ごめんなさい。
私、まっすぐ帰るので」
そう返したが、

「最終の新幹線には間に合うようにしますから」と、腕を掴まれてしまった。

困っていると、
「…俺との約束が先だから。
陽泉、行くぞ!」
佐々木くんがそう言って、私の逆の手を掴んで歩き出した。
私は佐々木くんについて歩く。

会議室から本社ビルを出るまで、佐々木くんは何人もの女子から
「連絡先を教えてください」や、
「これから食事でも」と誘われていた。
その全てに、
「これから同僚と帰るので」と断っていたが、その度に私は睨まれた。

やっと佐々木くんの車が停めてあるパーキングまで来ると、
「…いろいろとゴメン」
彼に謝られた。

私は"気にしてないから大丈夫"との意味を込めて笑顔を返すと、
「よろしくお願いします」と挨拶をして、助手席に乗り込んだ。
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