笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
私がそう言うと、
「あぁ。そんなことを言ったかもな。
でも、普通なら聞き流す程度の呟きを拾って、ちゃんと彼にボール運びをさせた陽泉コーチがスゴイと思うけど」
祐介はそう言ってくる。
「拓海の3Pも凄いな」
今度は佐々木くんだ。
「うん。
劣勢になったら、少しでも相手に衝撃を与えるプレーで、点差を縮めたいから」
「…なるほどな」

そこに拓海たちが、
「姉ちゃん、やったよ!
全国優勝したよ!」
とやってきた。
「うん、おめでとう。
でも、喜ぶのはあとで。荷物に片付けて、すぐに閉会式の準備だよ!」
私はコーチの顔で指示を出した。
「はい、分かりました」
そう返事をすると、すぐにみんなに指示を伝える拓海。
我が弟ながら、頼もしいキャプテンである。

ちなみに、同時に始まった女子の決勝は、男子よりも先に終了していた。
閉会式には、男女各4チームが参加する。
私は会場の隅っこで、麻生先生·祐介と一緒に閉会式を見た。
賞状をもらう拓海が誇らしい。
メダルをかけてもらっている15人の選手が誇らしい。
このチームのコーチが出来て、本当に良かった。
ちなみに拓海は、大会の最優秀選手(MVP)に選ばれた。

こうして、私にとって思い出に残る夏は、終わろうとしていた。




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