笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
そんな話をしながらロビーに着くと、約束の時間より早いけど、佐々木くんはもう来ていた。
周りにうちの生徒たちはいない。

「ごめん陽泉。約束より早かったよな?」
そう言う佐々木くんに、
「うん。でも、ミーティングは終わったから大丈夫だよ」
そう答えた。
それに祐介も、
「ヒナの言う通りなので、うちの生徒がいないうちに連れ出しちゃってください」
そんなふうに言う。
それに対して佐々木くんは、
「すみません、佐々木さん。陽泉をお借りします」
と祐介に頭を下げた。
私も、
「じゃあ祐介、行ってきます」
と言って、佐々木くんの後をついて歩く。
「あの、佐々木さん。
ヒナと話をするのに、もう俺の許可をとることはないので」
「……えっ?」
「…そういうことです。詳しくはヒナ本人に聞いてください。
じゃあなヒナ。
気をつけて行って来い。
佐々木さん、ヒナのことよろしくお願いします」
祐介はそう言って私たちを送り出してくれた。

佐々木くんは車で来ていて、助手席を開けてくれた。
「早いけど、飯食いに行こう。ファミレスでいいよな」
そう言うと、車を出した。
まだ8月の明るい時間。
初めて通る静岡の町並みは、とても綺麗に見えた。


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