笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「あのさ…」
しばらくしてから、佐々木くんに話しかけられた。

「なに…?」
「陽泉にとっての彼氏も、そういう存在?」
「えっ……?」
「…陽泉だってかわいいから、モテるだろう?
さっきだって、声をかけられてたんだし…」
「……………」
「だから。
ちゃんと陽泉のことを見てくれる人を、見つけられたのかなって」

佐々木くんの問いに、少し考えてから、ゆっくり答えた。

「裕介は、ちょっと違うかも…」
「…どういうこと?」
「遠い親戚なの。
小さいころにあったきりだけど、偶然、高校でクラスが一緒になって。
先輩や同級生から告白されて困っている私に、"彼氏のフリをしてやるから"って言ってくれて。
もちろん、お互いに好きな人が出来たら、この関係は終わりなんだけど」

郁海しか知らない裕介との関係を、なぜか佐々木くんに説明した。

「…じゃあ。陽泉はずっと好きな人がいないのか?」
「うん、そうなるかな」
「"彼氏役"の裕介くんだっけ?
彼も、ずっと好きな人がいないんだ?」
「…そうみたいだね」
「……………」
「……………」
「…本当に、そう思ってるの?」
「……………」
「…裕介くんは、陽泉のことが好きだと思うよ」
「……………」
「…そして陽泉も、彼のことがちゃんと好きなんじゃない?」


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