笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「あっ、ごめんね。
陽泉の弟くん。
"鬼の"田村コーチと結婚する井上愛美で、陽泉の高校の先輩です。
そして、田村さんの薦めで、ミニバスのアシマネ(アシスタントマネージャーの略)をやらせてもらっています。
一応、審判の資格もあります。
だから、拓海くんのことも分かります。
よろしくね」

愛美先輩は、そう自己紹介をした。

先輩、審判の資格をとって、アシマネしてんだ。
…知らなかった。

「あっ…。
小野郁海です。
陽泉の弟で、拓海の兄で…。当時は田村コーチに、しごかれました」

郁海も愛美先輩に自己紹介をした。
祐輔や彩菜ちゃん·彩乃さんはポカンとしてる。
それはそうだ。
私たちと違い、バスケにはあまり興味のない人たち。
ただ、プロの試合が生で安く見れるから来ただけの人たちだから。

「ヒナ!拓海くんは何番だ?」
「えっ、あぁ。
拓海は『4』番だよ」
祐輔に聞かれて答える。
そう。祐輔は私のことを"ヒナ"と呼ぶ。

拓海は選抜チームのキャプテンもしている。
今日の対戦チームは、ファイターズのジュニア。
私は再びコートに目を向けた。

「3分前です」

その声に、アップをしていた選手たちがベンチに戻ってくる。
ユニフォーム姿になり、1Q(クォーター)のメンバーがコート中央に整列した。

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