笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
裕介には、
『私は大丈夫だから。
気持ちが落ち着いたら連絡します』
とだけ、メールを返した。

迷惑を掛けてしまった佐々木くんを置いて、先に帰るわけにはいかない。
私は備え付けのティーバックで紅茶をいれると飲みはじめる。

しばらくすると、佐々木くんがモゾモゾと動き出した。
そして、寝ぼけ眼で伸びをして、
「んー。…あれっ、ヒナミ?」
と、私を見つけて驚く。
その姿が色っぽく感じ、

「…おはよう、佐々木くん」と答えながら、スッと目を逸らした。

「おはよう。
陽泉、着替えたんだ。
…あっ、ちょっと待ってて。俺もシャワー浴びてくるから」
佐々木くんはそう言ってバスルームへ行く。
すぐにシャワーの音が聞こえてきた。

すぐそこで、佐々木くんがシャワーを浴びていると思ったら、なんだかドキドキしてきた。
それをごまかすように、私は紅茶を飲み干した。

10分ほどでバスルームを出て来た佐々木くん。

「精算、まだだよな。
ちょっと待って、すぐに済ませるから」
そう言うと(たぶん)フロントに電話をかけて、
「帰りますので、精算お願いします」と告げる。
その後、何やら機械にお金を入れた。

「よし!
じゃあ陽泉、行こう」
そして、部屋を出て行こうとする。
その腕を、私は掴んだ。


< 71 / 250 >

この作品をシェア

pagetop