未完成な私たち
「彼女…?」
抱きしめられたまま、三浦さんは続ける。
「俺さ、さゆに初めて話しかけた日、一目惚れだったんだ。でもこういう仕事じゃん?今は稼げてるけど、これから先も仕事がくるかわかんなくて。そしたら自分に自信がなくなっちゃったの。好きだ、付き合ってほしいなんて言えなくて、でもこのままでいるのも切なくて。それでさゆから逃げちゃった」
三浦さんはずっと苦しかったんだ。きっと一番近くにいたのは私だったのになんで気づいてあげられなかったんだろうと思ったら、また涙が出てきた。
「……すき、わたしも、すき」
何か言おうと思えば思うほど言葉なんか出てこなくて、結局残った言葉は一番シンプルで一番言わなきゃいけないものだった。
「うん、俺もすき。最初からずっと」
そういうと三浦さんは私を離した。お互いがお互いを見つめ合う。
「まだまだ未熟な俺だけど、全力でさゆを愛します。だからいつか、結婚してください」
「自分の気持ちにも気づけないような私でよければ、こちらこそよろしくお願いします」
そして、どちらからともなくキスをした。三浦さんとの初めてのキスは、彼が噛んでいたガムのミントの味がした。
嫌なことから逃げちゃう三浦さんと鈍感な私。未完成な私たちだけど、これからは足りないところを補い合える関係になろうね。
【完】