残業しないで帰りたい!
(4)君を絶対に大切にすると心から誓った
7階の非常階段に立つと少し冷たい風が吹いていた。
風に煽られて、なかなか煙草に火がつかない。口元を手で覆ってもう一度ライターの火をつける。
はあっ……。
どうしてこんなことになったんだろう。
ガクッと手すりにもたれかかる。
俺は猛烈に後悔していた。
きっと調子に乗りすぎたんだ。
青い空を見ながら煙草の煙をフーッと吐き出した。
昨日はすごく楽しかった。
心から笑顔になれた。
本当に幸せな時間だった。
青山さんの笑顔も輝いて見えた。
笑顔を向けられるたびに、胸の奥が押されるようにキュンと痛んだ。
それなのに。
……。
彼女に、怖がられてしまうなんて……。
強い拒絶を感じた。
もう、絶対に嫌われたな……。
俺、なにやってんだろう。
昨日は青山さんがまた7時過ぎまで残業していたから、ここぞとばかりに「手伝うよ」なんて言って、会議室で二人きりになって一緒に封入作業をやってしまった。
辞めたアルバイトのことで悩んでいた彼女の話を聞いて少しは元気付けられたと思うし、俺もお喋りになってペラペラと昔話なんかしちゃって、そんな俺の話を彼女は興味を持って聞いてくれた。
その上ご飯まで一緒に食べに行った。
最初は断られたけど……。
あんなに速攻でバッサリ断られるなんて、考えてもみなかった。
断られることを想定もせず、何も考えないで誘った自分が恥ずかしかった。
そもそも俺、あんな風に女の子を食事に誘ったのは初めてだったかもしれない。
だって、もっと話したくなったんだ。
まだ離れたくなかったんだ。
でも、俺が落ち込んだことに気がついた青山さんは気を遣って食事に行くと言ってくれた。
君は優しいね。
こんな俺にまで気を遣ってくれるなんて。