残業しないで帰りたい!

今日、初めて彼の娘に会った。

茶色い瞳が印象的な、髪の長い大人しそうな女の子。

彼の娘はおどおどしながらペコリと頭を下げて「こんにちは」と小さな声で言った。

私の彼は私より11歳年上の34歳。
かっこよくて、背が高くて、仕事ができる私の自慢の彼。

そんな彼の娘もやっぱり背が高くて、小学生のくせに私より背が高かった……。

どうせ私は153センチしかないおチビだよ。

それにしたって、小学4年生のくせに158センチは、でかすぎでしょ!
親子揃って巨人族め!

彼に娘がいることはずっと前から知っていたけど、こうやって彼と娘が横に並ぶと二人はとてもよく似ていて、ああ、この人本当に娘がいたんだって実感して、なんだか悲しいような寂しいような気持ちになった。

彼の娘の香奈ちゃんは、彼が私と付き合いだしたことを知ると、気を遣って「お留守番してるから二人で出かけてきなよ」とお父さんを送り出していたらしい。

そんなの本心か?
猜疑心の塊みたいな私は、その話を信じなかった。

どうせいい子ぶってるんでしょ?
小学生のくせにどんだけ猫被ってんのよ。

そう思ってたけど。

香奈ちゃんは本当に気を遣う子だった。

なんて言うか、競争心とか闘争心なんかとは無縁な、おっとりした大人しい子。
その割に、大人の様子をよく観察していて控えめに気を遣う。

負けず嫌いな私から見ると、香奈ちゃんはあまりにも競争心がなさすぎてお人好しで「アンタちょっと大丈夫?」って言いたくなる。

だって。
そんなのんびりしてたら、この競争社会では置いて行かれちゃうよ?

私はアンタのお父さんを奪いに来てるんだよ?そんなのんびりしてて、いいの?
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