残業しないで帰りたい!

今回もまた私を差し置いて、年下の男が試験に推薦されていった。

でも、今回はいつもと少しだけ違う。
快く譲ってやった、と言うべきか。

吉岡は私のより3つ年下で、営業1課の係長をしている。

私は「男は頭が悪い」と思っているけれど、彼に関してはそうは思っていない。

なかなかの切れ者。頭のいい子だと思う。

……イイ男だし。

どうやら私はイケメン好きだ。今まではプライドが許さなかったけど、最近になってようやく自分のイケメン好きを認められるようになってきた。

まあ、吉岡は観賞用の男。年下だし。
あんなイケメンなら彼女だっているでしょ?

当然と言えば当然だけど、吉岡は見事、管理職試験を通過して課長へ昇進することになった。

3つも年下のくせにムカつくけど、まあ仕方ない。譲ってあげよう。

どこまでもイケメンに甘い自分。ホントにバカだ。

「課長昇進、おめでと」

「ありがとうございます!先輩、課長昇進祝ってくださいよっ」

「なによ、奢れっていうの?」

「奢れとは言いませんけど、食事くらい行きましょうよ」

そりゃ別に構わないけど。っていうか、ちょっと嬉しかったりするけど。

「いいわよ、しょうがないわね。お祝いだから奢ってあげる」

「ほんとですか?嬉しいなあ」

その笑顔、罪だね。輝いちゃって眩しいよ。
普段は強気な仕事ぶりで頼りになるのに、こういう時は仔犬ばりに甘えてくるところ、アンタもよくわかってるよね。

年下の観賞用の男に食事を奢ろうだなんて、私もすっかりオバサンだな。

吉岡は「行ってみたい所があるんです」とわざわざ行きたい所を指定してきた。

私が奢ってやるって言ってるのに、ホテルの最上階のレストランを選ぶなんて、アンタ図々しいわねっ!
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