残業しないで帰りたい!
「俺の未来は全て瑞穂に捧げる。だから、瑞穂の未来も俺に分けてくれないか?」
「……」
どうしてそんなこと言うの?
もう、胸が痛くて痺れてたまらない。
「それでもダメなら、キッパリ諦めて瑞穂の前から消えるよ」
「やだ……」
思わず首を振ってしがみついた。消えるなんていや……。お願い。
「離れないで……」
哲也が頭上でフッと笑ったのを感じた。
「ごめん……嘘。諦めるなんて、できるわけがない」
「……ほんと、に?」
「ホント!」
哲也、本当にこんな私でもいいの?
不安と寂しさから解放されて、また涙が止まらなくなる。
「絶対離さない。だから、瑞穂。ずっと俺のそばにいて」
「……うん」
「愛してるんだ……瑞穂」
また胸から指先までじわっと痺れた。
彼と一緒なら、私は前を向く勇気を持てるかもしれない。
彼の2度目の告白は、ビックリするほど情熱的で、私は彼にもう一度恋をした。
彼は私の王子様。
何があっても何度でも、きっと彼は私を迎えに来てくれる。
辛いこともあるけれど、決して消えない後悔や罪の意識を抱えていても、それでも私は幸せになっていいのかな?
女でいることに、罪悪感なんて持たなくていいのかな?
香奈……。
私にだって王子様はいるんだからね。
私たちは親友。
香奈の幸せを願うのと同じくらい、自分の幸せを願おう。
だから私たち、幸せになろう?
だって私たち、女の子なんだから。
【 昔の男に会う理由 中村瑞穂 】