残業しないで帰りたい!

青山さん、全然こっちを見てくれないなあ。
一度も目があったことがない。

見ていると女の子たちとは楽しそうに話をしている。君が楽しそうなら、それでいいけどさ。

遠くから様子を見ていたら、青山さんはうちのピンクの制服に戸惑っているようだった。
って言うか、すごく嫌そうだった。

この制服じゃ不満?すごく似合ってて可愛いのになあ。
なんならもっと可愛い制服に変えちゃおうか?俺、変える権限あるし!

「制服、変えたい?」

「はあっ!?何言ってるんですか?課長」

人事課の女の子たちに声をかけたら、見下すような答えが返ってきた上、大塚も鋭い視線を向けて噛みついてきた。

「課長、横浜支社の制服は去年変えたばっかですよ?アンタ、何言ってるんスか?だいたい全員の制服変えんのに、いくらかかると思ってるんスか?」

「あれ?そうだっけ?去年変えた?気が付かなかったなあ」

「課長、アンタも決裁したでしょ?少しは興味持ってくださいよ。いい加減、さっさとやる気出してください」

「いやだなー、俺はいつでも本気ですよ」

「はいはい。それならこれ、さっさと決裁印ください」

「ほーい」

大塚はバサッと資料を机に置いた。

1年前、人事課に来たばかりの頃、俺は本当にやる気がなかった。だからこんな扱いになってしまったけど、まあこれはこれでいいと思っている。

うちの会社は体育会系で、たいがいの部署は上下関係が厳しい。
まあ、上下関係があるのは当然だと思うけど、無駄に厳しすぎる気がする。それってどうなのかなっていつも疑問に思っていた。
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