さくら
桜子の頭を引き寄せ、自分の胸につける。
「アホなこと言うな。桜子のせいやあらへん。お前がオヤジと居てくれるからオレが好き勝手できるんやし」
桜子の額を志信の大きくて無骨な手が包む。眦に溜まった涙がツーっと流れていった。
「泣かんでええ。オレが帰ってきたから大丈夫や」
何度も何度も志信が桜子の頭を撫でる。志信の規則正しい心臓の音が桜子の心を落ち着かせる。小さな頃から志信の『大丈夫や』にいつも安心させられてきた。
大丈夫・・・・・・・・・・。
心細い夜も
不安な朝も
もう一人じゃない。
そう思うと桜子の心はほんの少し軽くなった。