さくら
久しぶりに訪れた聡志の家。
変わらぬ佇まいに時間が止まっているような錯覚に落ちる。
懐かしさに勝手に桜の木を見ようと中庭まで入り込むと先客がいた。
未散がいると思った。
20数年も経っているのにあの頃と同じ姿で。
聡志から聞いた驚愕の事実。
失踪した未散は身篭っていて、娘を産み、そしてこの世を随分前に去っていたこと。
何故・・・・・・・・・・?
子供がいたなら何故ぼくの側を去った・・・・・?苦しい程真野が自問する。
一緒に笑って泣いて、日々を重ねて家族3人で幸せに暮らしたかった。
聡志が言いにくそうに、その理由を話した。
未散・・・・・未散・・・・・何度も何度も心の中で謝罪する。
自分はなんて鈍感で迂闊だったのか。
桜子がリビングに入るとソファーに腰掛け、膝に肘を置いて組んだ両手を額に押し当てた真野がいた。
静かに暫く桜子は入口に佇む。
やがて気配に気が付いた真野が顔を上げた。