さくら
「お話を・・・・・しようと思って・・・・・」
真野が悲しそうな瞳の色を隠して無理に微笑む。
ああ・・・・・この人も辛いのだ・・・・・。
桜子が悟る。
今日まで桜子の存在どころか恐らく母の死さえ知らされず・・・・・。
「すまなかった・・・・・。知らなかったとはいえずっと放ったらかしで・・・・・」
桜子が真野の足元に座った。
「聞かせてください。貴方と母のこと」
何でも、何を言われても受け入れる。
それがどんなに哀しくて辛いことだとしても、志信がいるから頑張れる。
ポツリポツリと語り出した真野の話を必死で、一言一句聞き漏らさないように桜子は耳を傾けた。
京都でも割と大きな病院の次男坊。
いつまでも独身でフラフラしている真野に親が無理矢理婚約者を決めた。どうしても婚約者が好きになれなかった真野は聡志の家に避難してきて未散に出会った。
「きみはお母さん似やな」
話の合間にその姿を思い出して懐かしむように目を細める。