さくら
聡志が手を持ち上げて桜子の頭をゆるゆると撫でた。
「・・・・・藤子に自慢話ができるわ」
悪戯っ子のように口角を上げる。
「先生・・・・・?」
「真野よりも先に『お父さん』て呼んでもらえそうやし」
そう言いながら聡志は未だ桜子を撫で続けている。
「不肖の息子やけどよろしく頼む」
撫でる手を桜子が両手で取り、片手は繋いでもう片方の手で聡志の手の甲を何度も何度も摩った。
返事の代わりに、掌にいっぱいの気持ちを込めて。
聡志がやがて目を閉じるまで、桜子はずっと摩り続けた。