さくら
二
「おう、帰って来たんか。ドラ息子」
志信の父、後藤医院の院長である聡志が笑顔で声をかける。
「ただいま。なんや、思ってたより元気やな」
本来なら客間である中庭に面した和室にベッドを入れて、ベッドサイドにはパソコンと本が積み上げられている。志信は椅子に腰をかけた。
「悪かったな。途中で帰国させてしもて。あと半年ほど残ってたんやろ」
「ええよ。ドラ息子でもおらんよりマシやろ」
ベッドサイドに積み上げられた本を一冊ずつ手に取って題名を見る。
「まあ・・・・・お前がおった方が桜ちゃんの負担は減るやろ。可哀想に僕がこんなになってからずうっと気ぃ張って頑張ってやる」
「・・・・・・・・・・さっき泣かれた。そばに居たのに病気に気付かなくてごめんなさいって」
「ほうか・・・・・・・・・・」