さくら
十二


その日は静かに、穏やかにやってきた。


見上げた桜はまだ綻び始めたばかりなのに。


眠るように口元に笑みまで浮かべて逝ってしまった人。


真野先生とウメさんに手伝って貰いながら志信と淡々と必要なことを進めていく。

いなくなってしまった後に、志信と桜子が困らないように全てのことを書き記し、処理をしてあった。

お葬式に集まった後藤の親戚や、知人や、近所の人たちが『聡志らしい』と褒める。



要らない。


死の準備がキチンとされていたなんて賛辞。


立派じゃなくても良かった。

立派じゃなくていいからもっともっと生きていて欲しかった。


喪主として挨拶をする志信を見ながら、この家で育った15年間の思い出が桜子の胸を締め付ける。


これで志信は両親とも亡くしてしまったことになる。気丈に振る舞う志信が悲しい。この先、桜子が志信の心を埋めてあげることができるのだろうか。

志信の傍にいるのが自分で良いのだろうか・・・・・このまま後藤の家に居ても良いのだろうか・・・・・。


聡志は志信と桜子のことも親戚中に伝えておいてくれたらしい。

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