さくら
足音・・・・・しなかった・・・・・。
貴子が桜子に向かって歩いて来る。慌てて桜子が挨拶をしようと立ち上がった。
虚ろな表情が一瞬で厳しいものに変わる。
静かな庭に貴子が桜子の頬を打つ音が響いた。
突然のことで、桜子には一体何が起きたのか理解できない。
「なんで・・・・・あんたたち親子はーーー!」
貴子が唇を震わせ、絞り出すような声を出す。
再度、頬を叩く音が響いた。
呆然とする桜子の打たれた頬が熱を持ち赤くなる。
「この家から出ていきなさい!志信には家柄のしっかりした綺麗で賢い嫁をわたしが見つけるから!あんたなんか幸せになる資格あらへんのよ!」
昔から貴子はあからさまに桜子に冷たかった。そこにははっきりとした悪意があった。
今も桜子を睨みつける瞳には憎悪が見て取れる。
何故・・・・・?
何故貴子がこれ程までに自分を嫌うのか桜子には見当もつかない。
「おばさまは・・・・・なんで・・・・・」